街に開かれた、新しい寺の形

青山通りから大きな寺号塔を目印に金明孟宗竹の参道に入ると、そこは街の喧騒を忘れさせてくれる静寂の世界。参道左手燈篭は、室町時代の作で大変珍しいものです。また、参道奥の山門左手に立つ石碑は、人々の不老長寿を願って先代住職・中島真哉上人が起立したものです。
 かつて、寺は人々が気軽に立ち寄り、心のよりどころになっておりました。時とともに、寺はそうした存在感を失ってしまいましたが、街と寺、人と寺の関係を考え、新時代の寺のあり方を求めてきた梅窓院では、「街に開かれた寺」という理念を、平成16年の再建を機に形にしています。涼やかな竹林の参道は、長い伝統を都市の活気の中に融合する新生・梅窓院のあり方を象徴する物とも言えましょう。
 この参道の考え方も含めて、歴史と現代性の両立を目指す梅窓院再生事業の中心的役割を果たしたのが、世界的な建築家・隈研吾氏です。都市の寺院にふさわしく、広く一般の人々も受け入れられる「集いの広場」、「コミュニティー」を作りたいという梅窓院の願いに、隈氏は、瓦屋根のお堂もない、お堂を巡る回廊もない、まったく新しい建築をもって応えたのです。

建築物の特徴と魅力

隈研吾氏に伺いました。

設計意図

都市の中にオアシスのようなお寺をデザインしたいと考えました。
そのためにはまず、前面の交通量の多い青山通りからのアプローチが重要と考えました。寺にアプローチする間に、気持ちが静まって、仏様と対話ができる様に、アプローチを竹を用いてデザインしました。
お寺の本体には、屋根や格子といった日本の伝統的モチーフを、現代の技術でさらにシンプルに磨きあげて、寺のもっている「静寂」を建築の形にうつしかえようとしました。インテリアでまっさらにやわらかい、光の演出を試み、都市の中に心のオアシスを作ろうとしました。

特徴~竹林~

竹林は、アジアの文化において、昔から特別な役割をはたしてきました。高密度な都市から、煩雑な社会から、竹という装置を用いて、アジアの人々は「別世界」へとワープしたわけです。
梅窓院では、この竹のもつ力を最大限に用いました。特にこだわったのは竹の色で、青の竹のかわりに、黄色い竹を使うことで、さらにワビサビの感じを作りました。

【隈研吾建築都市設計事務所】

https://kkaa.co.jp/works/architecture/baisoin-temple/